【お知らせ】真宗興正派宗務総長あいさつ~本山「春の法要」に寄せて~

2020.04.18

真宗興正派 宗務総長あいさつ  ~本山「春の法要」に寄せて~

 本山春の法要を今年もお迎えすることができました。

 春の法要とは、お釈迦さまの御誕生、宗祖親鸞聖人の御誕生をご縁とし、お念仏のみ教えに出遇いながら、私たちの「いのち」のまことを見つめさせていただく法要です。

 御影堂をはじめとする本山修復も始まり、これから少しずつもとの本山へと戻っていきます。このようななかで、皆さまとともに春の法要をお迎えできること誠にありがたく嬉しく思います。


 しかしながら、残念なことではありますが、今年の春の法要は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、参拝者の受け付けを中止して内勤めで厳修することになりました。参拝を予定してくださった多くのみなさまに心よりお詫び申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の猛威は、日本だけでなく世界中で留まる気配がありません。お亡くなりになった方々に、哀悼の意を表しますとともに、ご遺族の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。また、ただいま療養中の方々には、一日も早い回復を念じ申し上げます。さらに、医療関係者をはじめ、最前線で立ち向かっておられる多くの方々に、深く敬意を表します。この感染症が少しでも早く終息し、皆さまとご一緒にお念仏を申す日が来ることを心から念じております。


 さて、私たちの生活は制限され、当たり前の日常が当たり前ではなくなりました。しかし一方で、私たちの生きる世界が、例外なく病に罹り、いのちがいつ終えるやもしれない世界であるという事実をも再確認させられます。

 死をもたらす目に見えないものは、私たちに不安と動揺を与え、正しく物事を見る眼を失い、疑心暗鬼の世界を生み出していきます。疑心暗鬼の世界はなんでもないものまでも恐ろしく感じてしまい、周囲を不信に思い、ついには偏見や差別を作り出してしまいます。いま私たちができることは、私たちが作り出す差別や偏見というウイルスを抑え込み、冷静に、正しく物事を判断し行動することです。行政、公共団体が発表している指針に従い、手洗いを行い、三密の回避など感染防止に努めてまいりましょう。


 親鸞聖人はご和讃で、

  小慈小悲もなき身にて 有情利益はおもふまじ

  如来の願船いまさずは 苦海をいかでかわたるべき

        『正像末和讃』悲歎述懐讃

〈現代語訳〉

  他者を慈しむことも、他者の苦しみを共に苦しむこともし得ない身では、人々を救うことなどは思ってもできないことです。

  阿弥陀仏の誓願の船がなければ、苦悩多き迷いの世界をどうして抜け出ることができるでしょうか。


とお示し下さいました。


 真宗興正派では、「興隆正法運動」〈やっぱり阿弥陀さん〉の三つの実践の一つとして、「柔らかな心でお互いが認め合える幸せ」を伝えています。

 自分の都合で物事を判断し、他者を想像することもできず、思いやることも、寄り添うことも、なかなかできない私たちです。この度の春の法要をご縁とし、阿弥陀仏の願いに導かれながら、苦悩多き世界を、共に悩み、共に苦しみ、共に生きぬく中で、ご一緒に「お互いが認め合える幸せ」を見つめ直し、目指して参りたいと思います。

真宗興正派宗務総長 三井雅弘

PAGETOP